Takivan Damula Chuyouji(達姆拉・楚優吉)

台湾先住民/台湾]ダンス(第1週/公演時間:約20分)

振付|Takivan Damula Chuyouji(達姆拉·楚優吉)

台東出身のパイワン族。ミュージカル俳優、歌手、ダンサー、振付家、演出家として活動。国立台北芸術大学舞踊学科卒業。現在は淡江大学合唱団のレジデント演出・振付家を務める。

舞台経験は豊富で、ミュージカル・ダンス・演劇の分野で幅広く活躍。代表作にはブロードウェイミュージカル『キャッツ』中国語版での主要キャスト出演をはじめ、台湾各地の劇団とのコラボレーションがある。また、ベジャール・バレエ団の『ボレロ』に群舞として参加し、林懷民、マーサ・グラハム、孔和平といった国際的な芸術家との共演歴も持つ。

振付家としても実績を重ね、日台合作ミュージカル『TARU!恐竜が復活した』中国語版、ブロードウェイ公認『オズの魔法使い』中国語版などの作品で振付を担当。

また、振付だけでなく演出も手がけ、物語性のある舞台表現を舞踊と音楽劇の言語を通じて探求している。

彼の創作は、音楽、舞踊、演劇を融合させ、世代や文化を超えて観客に語りかける。多様な文化背景と芸術形式を融合させ、伝統的な枠組みを超える新たな舞台表現を目指している。


作品名:「Pacavalj:山へ還る道」

出展作品紹介

台湾・台東県の南端、大武郷に位置する大鳥村(Pacavalj)は、「山の裏のさらに奥」にたとえられる場所であり、大武山と太平洋に挟まれた傾斜地に静かに佇んでいます。

この地名には、伝説と記憶が織り込まれています。海に浮かぶ大鳥、翼を広げたような山の姿、そして民族のあいだに存在した歴史の柵。ここには、大地、民族、そして記憶にまつわる多重の「声」が潜んでいます。

ここは、パイワン族の居住地であり、かつてはプユマ族の勢力範囲でもありました。そして振付家・ダムラにとっては、身体と魂の記憶が交差する原点でもあります。

本作は、「帰還」と「祝福」、そして「多層的な文化の文脈」から出発する舞踊作品です。パイワン、プユマ、そして日本にルーツをもつ文化が重なり合うなか、振付家の名「ダムラ」は山と山の間にこだまし、まるで時代、言語、文化を越えて響く風のように舞台を漂います。

部落で育ち、のちに旅立った台湾先住民の創作者として、大人になるにつれ、自身のアイデンティティは使命へと形を変え、故郷への思いは文化継承の原動力となりました。

本作は、現代都市や異郷に暮らす先住民の視点から始まり、やがて大地へ、そして神話の世界へと回帰していきます。個人の記憶から集団の神話へ、実際の災害から伝承される「大鳥」へと、幾重にも感情と地理的イメージが折り重なり、郷愁、隔たり、そして帰還のプロセスを身体で描き出します。

この作品を通して、かつてあったはずの「通じる道」を、身体の記憶によってもう一度たどろうとするのです。