101歳の画家江上茂雄

2013年11月1日 toyoda Tag : , ,

101歳の画家江上茂雄

福岡県立美術館で開催されている「江上茂雄 ― 風ノ影、絵ノ奥ノ光」展覧会をレポートします。
糸芸スタッフの間でひそかにブームとなっている江上茂雄さんの展覧会。
それは江上さんが101歳にしてなお、風景画をつくり続けていることにも驚きなのですが、美術の特別な勉強もしていなければ、名声を目指すわけでもなく、既成の芸術やモードにとらわれることなく、毎日欠かさず身近な日常を描き綴った絵画達だからです。しかも、江上さんはどの作品にも失敗はない、と言われるそうです。

現在の福岡県みやま市生まれ、大牟田育ちの江上さん。15歳で三井三池鉱業所建築課に入社。以後45年間会社員勤めの傍ら、ほぼ毎日、途切れることなく創作活動を続けてきた江上さん。絵のモチーフは郷土の風景、野原に咲いてる草花、毎日見慣れた通勤風景の四季折々で見せる顔。私達がふと、見慣れた景色が雨にぬれる様を美しいと感じ、シャッターを切る感覚に近いものを感じます。江上さんはそのなにげないエモーションを絵として綴り続けてこられました。

また、200点(江上さんの作品自体は現時点で総計20,000枚にもなるといわれています。)にも及ぶ作品も飽きることなく見られるように設営された点も注目です。
通常のホワイトキューブのように壁に掛けられた絵画だけでなく、木材で出来た台に平置きされた絵。

「江上茂雄 ― 風ノ影、絵ノ奥ノ光」展覧会

子どもなら絵画が目線の高さになります。思わず手を触れたくなるような身近な距離感。

順路が決まっているわけではないので前後で鑑賞している来場者同士の距離も近くなります。
おばさま方や家族連れ、その場で出会った人たちが絵を介して言葉を掛け合う光景にもたびたび遭遇しました。

油絵を買いそろえるお金が無くてクレパスで代用した絵、こんな風に描ける物なのか、と見入ってしまうのは誰しも一度はクレパスで絵を描いたことがあるからでしょう。他にも見慣れた草花の素描など、緻密な中に親密さが漂う江上さんの作品を前にすると話題がつきません。

 

「江上茂雄 ― 風ノ影、絵ノ奥ノ光」展覧会

「江上茂雄 ― 風ノ影、絵ノ奥ノ光」展覧会
おもしろいのは絵によってサインがあったりなかったり、そのサインも時々で違うものが刻印されています。

人に上げる時にだけサインを入れていたからこんな風になったのだとか。自身の作品を後世に残す、というより絵を描き綴る、ということに集中されていたということでしょうか。

そんな豆知識も会場にいるスタッフが教えてくれます。このスタッフは「ハンズさん」と言って作品についてガイドする方達なのだそうです。今回の江上さん情報はほぼ、そのハンズさんから得たものです。
(このハンズさんがまた、絶妙のタイミングで話しかけてくれるんですよ。)

 

「江上茂雄 ― 風ノ影、絵ノ奥ノ光」展覧会

平置きされた版画。絵画のバックが木になると、また更に暖かさを感じます。


同じ福岡県、通勤途中に眺める毎日の風景、溢れる光の粒、時に雨で濡れた景色、足元の見慣れた草花、そこで育ったわけではないのに懐かしさや親しみを感じるのは作品が魅力的だという証しではないでしょうか。

「江上茂雄 ― 風ノ影、絵ノ奥ノ光」展覧会

 

ここまで読み進めていただいた方、今回のレポートは糸島ともレジデンスアーティストとも関係ないやんと思われたかもしれません。
そうなんです。しかし、糸島という場に根差して活動している私たちにとって、江上さんのようなアーティストは勇気づけられる存在です。
糸芸のスタッフや参加アーティスト達もまた、他に仕事を持ちながら日々、活動しています。仕事があり、家庭があり、そんな中、好きというだけで活動のモチベーションを保つのは案外大変だったりします。

だけど江上さんは退職後も大牟田の荒尾市に移り住み、今なお創作活動のために1人暮らしをしているそうです。

今回の展覧会は郷土の美術をみる・しる・まなぶ 特別編だそうです。
地域に根ざして芸術を育んで行きたい糸島芸農にとっても地域の才能を掘り起こす、呼び覚ます、そんな存在になりたい、いやなれるといいなと感じました。

また、展覧会と連動して大牟田市立三池カルタ・歴史資料館にて
「江上茂雄の世界 ~ふるさと大牟田の情景~」も開催中です。お近くの方や、江上さんの魅力をもっと味わいたい方はぜひ足を運ばれてはいかがでしょう。

余談ですが、レジデンスアーティストの個展オープニングが終わった深夜の牧のうどんで、江上さんの図録を皆で回し読みしました。(すんません!)
この日、たまたま江上さんの展覧会を見てきたというスタッフの購入した図録。一冊という形ではなく、時期ごとに綴りまとめられていて、大小、サイズの異なる小冊子が箱に収まっています。一般的な大きく分厚い図録とは違い、ウエイトを感じず皆でシェアできるのが楽しい。そんなとこまで、とことん身近な作りになってて最後まで江上ワールドを堪能できました。

そしてこの図録を見た、オーストラリアの写真家ピアさんは江上さんが101歳の現役画家と聞いて、たいそうびっくりしていました。

***

福岡県立美術館
郷土の美術をみる・しる・まなぶ 特別編
「江上茂雄 ― 風ノ影、絵ノ奥ノ光」展覧会
開催期間 / 平成25年10月5日(土)〜11月10日(日)

大牟田市立三池カルタ・歴史資料館
「江上茂雄の世界 ~ふるさと大牟田の情景~」
開催期間 / 平成25年10月1日(火)~12月8日(日)

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